シュレディンガル

夢顎んくが運営する総合ブログサイトその名も「シュレディンガル」

ファントム・メナス

 

 ピルクル飲んでる?僕は飲んでる。

 

 ただ、学生時代の君たちのように漫然とチュングロプチュングロプ意味不明な音を立てながら飲んではいない。はっきり目的があった上でチュングロプ鳴らしている。

 

 僕には腸内環境を整えなければいけない理由がある。

 

 それは、夢を叶えるため。

 頭も悪いし体力もなく何事においても無気力で怠惰だった僕が、ようやくのめり込めるものを見つけた。それを叶えるための布石として、ピルクルだ。

 

 

 今回は、そんな僕の夢についてお話しさせてもらう。拒否権はない。

 

 

 

 

 突然だが僕の性癖を公表しよう。

 

 

 僕は、人がおしっこを漏らす様子がもうたまらなく、それはたまらなくたまらなく好きでたまらない。

 

 

 別に珍しい性癖の方がインターネットで優位に立てるからそうしてるわけではない。

 

 あれは小学校5年生の頃。

 

 大分合同新聞夕刊の投書欄で「孫のおもらしが直らない」という内容を見たとき、何か経験したことのない感情が胸を揺さぶった。

 

 この気持ちは何だろう。

 

 かわいい。情けない。恥ずかしい。うれしい。安らぐ……。

 

 まるで、Mステでパフュームが話す広島弁を聞いちゃったときのような高揚感。それが性衝動だと気づくまでに時間はかからなかった。

 

 

 ちょうどネットに触れ始めた頃だったので、その欲求を満たせるようなものをひたすら検索し探し求めた。

 

 同じ趣味を持つ人々が運営するサイトに入り浸り、小説やイラストをむさぼった。

 

 そんな中、とても狭くニッチな界隈であるにもかかわらず「男のおもらしは有りか無しか」で大論争が起こり、結果的にスレが分裂する様子も目の当たりにした。

 二度の大戦を経ても人類は学ばないのだと悟る。

 

 

 そうした日々を過ごしていれば、他人のお漏らしを見るだけで飽きたらず自分で試してみたくなるのは自明の理である。

 

 

 ジャスコ2階の下着売り場で早足になりながらブリーフを購入。(トランクスだと一瞬で下へ落ちるので「カタルシス」が皆無)

 

 ボビーオロゴンの歯のように真っ白なそれに両足を通して、風呂場で鏡の前に立つと、下半身の力を抜いてゆっくりおしっこを出す……。

 

 パロロロロ……と流れ落ちる尿がブリーフの前側を黄色く染めた瞬間、繊維の隙間からあふれ出して太股をつたい、浴室の床に水たまりを広げていく。これは、これは……。

 

 

 

 

 

 まったく気持ちよくない。不快さだけが淀む。

 

 この行為によって生み出されたのは、悪臭のする布だけだった。

 処分に困ってビニ袋で包みベランダに放置してたらいつのまにか消えていた。

 処理落ちか?真相は分からない。

 

 

 そんな経験を経て気づいた。僕はおしっこを出したいのではない。

 

 

 

 

 

 

 漏らしたいのだと。

 

 

 

 おしっこを出してみたところで何の快楽も得られない。

 僕が求めるのはあくまで物語。人の、感情の揺さぶりだ。

 

「ピアノのレッスン中、あこがれの先生の前で我慢できず……」

「気になっていた隣のおねえさんと、マンションのエレベーターに閉じこめられ……」

「修学旅行にて、こっそり持ってきた缶チューハイを飲んで朝起きたら……」

 

 

 

 このように、場所と状況があり、プライドの狭間で羞恥に身を焦がされて初めて完成するのがおもらしだ。

 

 

 今でこそ性癖のカテゴライズは徹底されているが、一昔前は単なる草むらでの放尿、ひどいときにはノーパンでの放尿イラストがおもらしとタグ付けされサイトに投稿されていたときもあった。

 ありえない、非人道的だ、国連非加盟国か?

 そんな声が聞こえてきそうだが、確かにそういう時代があったのだ。

 こんな悪習は令和に持ち込むべからず。

 

 

 

 いいか?放尿とお漏らしは違う。

 放尿はただ自分の意志に従い膀胱から尿を放出しているにすぎず、そこにドラマはない。単なる排泄行為の粋を出ない。

 不可抗力でおしっこを漏らしてしまい、それを恥じる様子にこそ人はそこに庇護欲をかき立てられる!守ってあげたくなる!

 分かってほしい!僕はおしっこを漏らし、それを、全肯定してほしいんだ!

 ハーッ、ハーッ……(先生、そんなに興奮されては心臓に……)

 

 

 とはいえ本当に人が見てる前で、ぎりぎりまで我慢した果てにお漏らしするというのは簡単に出来ることじゃない。

 

 

 人間には生活という重い枷がある。

 ダイバーシティの推進が見直されつつある昨今においても失禁に向ける人々の目は依然厳しいのが現状だ。

 

 日本はお漏らしへの理解が遅れていると言わざるを得ない。おしっ後進国だ。

 

 

 というわけでお漏らしはしたいのだが、日々の暮らしに縛られて出来ない。さてどうする?

 

 

 

 そこで、ひとつ妙案を思いついた。

 

 

 

 僕は最近、同人催眠音声にハマっている。

 特にリピってるのは赤ちゃんプレイモノや授乳モノ。

 

 もちろん運転中は危ないので、休日出勤したときに誰もいないオフィスでひとり聞いている。

 

 幼児退行した俺が口の端によだれをにじませながら作ったソフトウェアの味はどうだ!?ざまあみろ!と思いながら納品するのはとても心地が良いものだ。君もどうだ?

 

 というのはまあ冗談で、本当に冗談で、休憩時間にラジオ感覚で聞き流しながらめしを食べているのだが、それでもふとトイレに立ったときに亀頭を見るとヌルヌルトロトロに融解している。

 あれ?チンチンでホイコーロー作ったっけ?と思わせてくれるスゴいヤツ。

 他者の声の力というのは決して馬鹿には出来ない。

 

 

 つまり、催眠音声によって脳を騙せば不可抗力でのお漏らしが可能となるわけだ。

 

 

 思い立ったら吉日と、DLSiteで催眠おもらし音声作品を調べる。

 最も評価の高い作品のページを開くと、おお。レビューに並ぶ賛辞の奔流を見よ。

 

 

「丁寧な催眠で理性や抵抗心をそぎ落とされ、最終的にはおむつが膨らみます」

 

「囁きボイスと心地よい水音があなたの尿道を開いていく…」

 

「この作品と比べれば今まで聞いてきたものはボイスドラマにすぎない」

 

「電車で試すのはやめておけ」

 

 先人たちの声が、僕の背中と膀胱を押してくれている。

 なんと心強いことか。即決で購入した。

 

 

 さらに今回僕は、立ったままのお漏らしではなく「おねしょ」に挑戦しようと思う。この界隈に詳しい人は驚くかもしれない。

 

 

 寝ながらおしっこは、人類の悲願である。

 横になった体勢での放尿というのはとにかく難しいのだ。その理由は単純だ。

 ビンを逆さにひっくり返すのと横に寝かせるのでは出てくる液体の量はどちらが少ないか?当然後者だ。

 

 それに精神面の問題もある。

 人は成長するにつれ「就寝中におしっこしてはいけない」ということを学ぶ。本能レベルで刻まれたそのルールを破るのは並大抵の苦労ではない。

 

 

 だが催眠ならば。

肉体的には依然困難としても、精神のタガは外してくれる。いい時代になったものだ……。

 

 

 

 決行当日。

 

 家に誰もいない事を確認すると自室にこもり、あらかじめ購入しておいた大人用おむつに足を通す。

 

 便利なことに、30枚入りパックなどを買わなくても今はお試し用として2枚入りのおむつなどが売っている。これはもう催眠お漏らしに使ってくださいと言っているようなものだ。ユニチャームにそういう部署があるに違いない。

 

 そして無い袖は触れないし、無い尿は出せない。

 なので予めアイスティーと緑茶をがぶ飲みしておく。お茶のカフェインには利尿作用があるとかつてKinKi Kidsも歌っていたな。

 

 

 次に防水対策。万が一おむつから漏れてしまったら大変だ。

 本来は幼児用のおねしょシーツや介護用シーツを敷くのが正しいが、そんな費用はないので大容量のゴミ袋を布団の下に広げて代用する。

 どうせゴミを入れるのだから汚れても問題ない。ライフハックだ。

 

 窓もしっかり閉めておく。

 近所の人たちが音声を聞いてうっかり催眠に掛かってしまいその場で失禁してしまったら取り返しが付かない。なんとお詫びをすればいいのか。何枚入りのクッキーを買えばいいのか。

 

 

 ともかく、これで準備は万端。あとはバシュッと漏らすだけだ。

 ベッドに寝転がり、イヤホンを耳に挿してプレイヤーを再生する。

 

 再生後すぐにいきなり催眠を掛けられるわけではない。

 まずは足を曲げのばしたりして軽くストレッチを行うように指示がある。そうやってほどよく心身をほぐしたほうが掛かりやすいのだ。

 

その後、催眠導入が始まる。

 

「あなたは今、静かな湖の水面に仰向けで浮かんでいる……体はすっかりリラックスして、とても気持ちいい……」

 

 女性の優しい声に導かれながら、ピチョーン、ピチョーンと一定間隔で水が落ちる音を聞いていると次第に現実の輪郭が曖昧になり、夢の世界へ溶け込んでいくのが分かる。

 

 人間の精神というのは無数の小さな羽虫が好き勝手に飛び回っているようなものであり、催眠とはその羽虫が全て、一つの木に止まるということである。その木が引っこ抜かれようが切り倒されようが、僕は運命をともにするしかない。

 

 やがて、僕は体をまったく動かせなくなる。完全に催眠に掛かってしまったのだ。

 

 音声は次のチャプターへ進む。

 そう、待ちに待った「おもらしの章」だ。飛影が欲しがってました。

 

 

「あなたは水の中にいるので体が冷えて、だんだんおしっこがしたくなる……」

 

 その声の通り、自身の下腹部にゆっくりと重たい感覚を覚えていく。

 おしっこのお出ましだ。

 しかし今の僕は体が動かせないからトイレに行けないぞ?どうしよう。

 

「でも大丈夫、ここは水の中だから、おしっこしても誰も咎めない……」

 

 確かに。天才!

 

 

「さぁ、私の合図でおしっこを出して……いくよ」

 

「じゅーう……」

 

「きゅーう……」

 

「はーち……、おしっこがだんだん、降りてくるのが分かる……」

 

 

 このゲームには必勝法がある。

 カウントダウンがゼロになった瞬間におしっこを出せたら勝ちだ。すっかり緊張がほぐれきった今の僕に、おしっこを出すことなど造作ない。

 

 

 

「なな……」

 

「ろく……」

 

 さーて、そろそろだなと下っ腹にぐっと力を込めてみる。

 


 出ない。

 やはり、いくら催眠に掛かっても寝たままは難しいらしい。

 

 

「ごー……」非情のカウントダウンは進む。

 奥歯を噛みしめ、さらに力を入れてみる。

 

 にゅるっと、終わりかけのムヒを絞り出したような感覚を尿道から感じる。これが尿だとすれば、そうか、力を込めて出せば尿は液体じゃなくて粘体なのか。発表すれば学会がひっくり返るぞ。

 

 とはいえ、まだ外に出たわけではなさそうだ。例えるなら銃弾を込め撃鉄を引いたにすぎない。だが終わりは近い。日本の夜明けぜよ。

 

 けれど音声は待ってくれない。

 

「いーち」

 

 

 イヤホンから飛び出したその声に耳を疑う。え?あと1秒!?いつのまにか進んでいた。待って、待ってくれ。運転手さんそのバスに僕を乗っけてくれないか。

 

 焦った僕は下腹といわず、体全体で、脱皮するような思いで尿を押し出す。

 

 うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!

 

 頼む……。

 

 

 

 

 

 

 

 ショロロロロ……

 

 

 これは!性器の先っちょの方から液体があふれ出し、お、おお。それが尻とおむつの吸収体の間にある多目的ホールへと溜まっていく感触!吸収されない液体の一部はぴたぴたと跳ね返って尻の表面を朝露のごとく濡らし、やった、成功だ!ついに、ついに僕は、寝たままおしっこできたんだ!!ありがとう(?)本当にありがとう(!)……

 

 

 

 

 

 

 

 

 P.S. うんちも出ました。

 

 

 

 

 はて。これはどういうことだ。

 この臭いは?尻のねばつく感触は?

 おしっこにはこちらからお願いしてご足労頂いたが、うんちに関しては全くお呼びではない。なんで?バズったので宣伝か?

 

 突如現れたファントム・メナス(見えざる脅威)に戦慄する僕。

 

 

 

 

 ……言い訳させてほしい。仕方なかったことなんだ。

 

 人類が数万年かけて培ってきた「おしっこはトイレでする」という原則と「いやだ俺は布団でおしっこするんだい」という欲求がせめぎあいバチバチにぶつかった結果エネルギーは横道に逸れ肛門へ向かった。それだけだ。不幸な事故というわけだ。分かるね?分かったか。そうか、いい子だ。さあ、ベッドへお戻り……。

 

 

 

 

 さて現状は最悪と言わざるを得ない。

 

 

 なんせまだ催眠に掛かっているのである。

 音声は僕の状況を顧みることなく続いており「ふふっ、いっぱい出たね?」なぞ抜かしおる。馬鹿にしてるのか?催眠に抵抗し精一杯動こうとしても、頭の先と足先がわずかに上がるだけでゾイドパイロットのような体勢で涙をにじませることしか出来ない。共和国ゾイドに乗せるのはやめてくれ、キャノピーが透けてるから……。

 

 

 

 

 地獄のような時間を耐え抜いた末、ようやく催眠解除の音声が流れ終わる。

 僕はよろめきながらもすぐさま立ち上がりトイレへ猛ダッシュ

 

 

 

 洋式便器に座りウォッシュレットを起動すると、腰を回して尻全体に水を当てる。

(ぐるぐるぐるぐるグルコサミンの動きを想像してもらいたい)

 

 あらかた洗い落とせたかな?というタイミングでトイレットペーパーを尻へあてがい、何度か往復させた後、表面を確認すると……うえっ。まだ汚れている。再度ペーパーをあてがっては擦る。

 

 

 

 それを何度繰り返したことだろうか。

 拭いても拭いても一向に汚れは取れない。泥道を走った後のパジェロを洗っている気分だ。便器の底に溜まる大量のペーパー。このままだと詰まりそうなので一旦流し、ため息をこぼす。

 

 

 あと何度繰り返せばいいのだろう。

 拭いたそばから新しいクソが補充されているのか?昔話に出てくる、注いでも注いでも酒の減らない徳利を思い出す。俺の尻もそのシリーズに成り果てたらしい。

 

 

 

 

 永遠のような苦行を繰り返し、ようやく綺麗になった尻を持ち上げると決意した。

 

 今回の経験で学んだことがひとつある。

催眠おもらしを行うときは、腹の中を空っぽにしておく必要がある。そのためには宿便なんか溜めておくわけにはいかないのだ。腸内環境は常に最善の状態に保っておかねば。

 

 

 今後の課題を胸に刻みながら、僕はピルクルを買うため家を出るのであった……。

(エピソード2 クローンの攻撃へつづく)