全寮制デート倶楽部「ラブ♥タモリ」 その1
――国立行政法人プスプス自動車学校。
バカヤロー!なにやってんだ!
すみません、ブレーキと妹を間違えてしまいました
んふ
んふ
6秒に1回のペースで事故りやがって!もう限界だ!てめえの顔なんざ二度と見たくない、二度とウチの敷居を跨ぐんじゃねえと主人が仰っております、すみませんが今日のところはお引取り願います
了解しました
というわけでさ、免許取れなくなっちゃったの
私は祭 ぬいめ。
短大を卒業したばかりの20歳。悔しい?
今宵は行きつけのバー兼シャディサラダ館「スマンチョ・プロンプト」にて幼馴染の「次スレ 乙(じすれ おつ)」相手に昼間の件(くだん)を愚痴っていた。
あーあ。あの教習所、県下最大級のS字クランクがあるから気に入ってたのに
寝耳の水割りをちびちび飲みつつ、ため息をつく私。
ぬいめは昔から不器用じゃからのう。わっちも正直、おぬしの運転する車には乗りとうない……
♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥~~~!!!
年相応に生意気なことをいう乙のことが急にいじらしく想えて、私は両腕で彼女のことを強く抱き締めた。洗ってないこたつ布団みたいな匂いが鼻孔をくすぐる。ねえ見てごらん私たち、ちゃんとここで根を張れるよ、体はふたつ、心はひとつ…♥
な、なにをするんじゃ、ぬいめ!わっちを子供扱いするでない!!
なおも躍動する彼女の唇を強キスで塞いでやる。人が見ていたってこうなんだから、誰もいなけりゃ砂漠の太陽ね。そんなとき突然、何かがヒールの音を高く響かせながら私達の間に割り込んできた。
マティーニです……
ヘッホ……
ちょっと待って、私そんなの頼んでないわ
あちらのお客様かもです……
マスターが指をぶっ指した方向にみんな注目。
そこには私より少し年がデブそうな男がいて、こちらへ笑いかけていた。
爽やかな笑みから溢れる大人の歯が爽やかな印象を与えてきて、私は「もし彼のような男が上司だったら、働くんだろうな」とボン少リ思ったりした。
僕のオゴリだ。グイって一杯やっておくれ
あらあら、火曜7時と勘違いしてるんじゃなくて?
男は、サチモスと名乗った。私は彼の話を聞くことにした。
都内で助手席業を営んでる。言いにくかったら、サチでもモスでもミラノサンドCでも構わない
ばかな
君、退屈でしょ
なるほど、すっかりお見通しというわけだ。
実はネ。秘密のクラブをやってて、今は会員集めに奔走してるってわけ
サチモスは懐から30センチ四方の小さな紙片を取り出してカウンターに置いた。そこには懐かしのMS P ゴシックで「全寮制デート倶楽部 ラブ♥タモリ」と書かれている。
全寮制デート倶楽部 ラブ♥タモリ……
三度の飯より恋愛が大好きな恋愛バカどもを全国から集めてお互いに愛を貪り合う今世紀最大のビッグイベントさ。どうだい?なんと心得る?
全寮制デート倶楽部 ラブ♥タモリ
全寮制デート倶楽部 ラブ♥タモリ
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全
寮
制
デ
ー
ト
倶
楽
部
ラ
ブ
♥
タ
モ
リ
全寮制デート倶楽部 ラブ♥タモリ
全寮制デート倶楽部 ラブ♥タモリ
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全寮制デート倶楽部 ラブ♥タモリ
全寮制デート倶楽部 ラブ♥タモリ……
たった13文字のその言葉を何度も何度も、胃と声帯で往復させる。そのうち私は異様な精神の高ぶりを感じるようになった。抑えきれないこの感情は?尻ポケットにねじ込んでいた財布を開いて、中の紙幣を確認する。ふっ、ちにうえておるわ。
いいわ。わたしもそのクラブに入れてちーだい
そうこなくっちゃ!思わず僕もクチがミッフィーちゃん、前祝いにどんじゃか飲んでくれ
ふふ。じゃあバーボンをダブルで
お前らがどう言おうと、この夜はわりかしいい夜だと信じる。そして私の恋愛遍歴の最初の1ページに恥ずかしいシミがついたのであった……。
――つづく。